リハドクターKのたわごと

医学医療への雑感を書き記します

後医は良医?

私は自分が医者として『絶対にしない』と決めていることが一つあります。

 

私は現在、急性期病院での治療を終え、リハビリテーション目的で紹介されてくる患者さんを診ていますが、その急性期で治療された先生の治療を絶対に批判して、患者さんの前では言わないことです。

 

時々、『なんでこんな治療したのかな?』とか『これちょっとこうした方がいいんじゃないか?』とか『もう少ししっかり観察してよ。』とか思うことはありますが、急性期には急性期のギリギリの決断があったと思うので、患者さんの前では絶対に言わない。違う方法だったらもっとよかったのか?と言われればそうとも限らないのが人間のからだの不思議なところだからです。

 

脳出血で左手の麻痺がひどく、うちの病院で数ヶ月訓練しても左手が実用的に動くことなく後遺症を残した患者さんがいました。その患者さんはうちの病院での訓練が終わったあと、『せっこつや』に行き、こう言われたそうです。

 

『僕のところ(せっこつや)に発症して4日以内に来れば、この左手は完全に元に戻ったのに。』

 

?????

 

後からでは何とでも言えます。脳出血4日目なんて、まだベッド上で自立して動けないレベルなんですが。

 

急性期治療をやっている先生の多くは真摯な気持ちで、急な選択の元で治療しています。後から診る医者のほうが絶対に冷静にゆっくりと治療できるので、良く見えるのは当たり前なのです。

薬物使用した麻酔科医師逮捕に関して

先日、フェンタニル(麻薬)を手術中に不正使用していた麻酔科医が逮捕されました。ニュースによると過去20回くらいフェンタニルを自分で自分に打っていたようです。

 

この麻酔科医が住んでいるところは群馬県太田市。私の実家のある市です。田舎なので彼に関する噂話はいくつか聞かされました。

 

噂が嘘か本当かわかりません。しかし麻薬の不正使用に手を染めるまで彼はいろんなプレッシャーやストレスに苛まれていたのかもしれません。

 

彼は本当に真面目で優秀だったのかもしれません。そのストレスやプレッシャーの吐きどころがわからなかった可能性は高いと思います。

 

医者ってやってみると、スタッフ間通しや患者間での人間関係でこの楽天家の私でさえも時々、悪夢にうなされて冷や汗をかいて起き上がることもあるくらいストレスがたまることもあるし、忙しすぎて自宅に帰れないことも度々あります。休みの日にも患者さんの急変で電話がかかることもあり、あまり落ち着いていられないのが現状です。

 

逮捕された麻酔科医のやったことは到底許されないことではあります。ただ彼の気持ちの一部分はなんとなく理解はできるし、多少の同情があります。医療業界にもストレスマネージできるような環境ができるといいなぁと感じます。

『自分を平気で盛る』医者

気持ち悪いくらい正義感にあふれている医者

自分はすごく人気者だと強調している医者

やたらフェミっている医者

 

SNSが発達してきてから増えてきているなぁ、と思います。

 

患者さんの笑顔を大切にしたい、とか言っているくせに看護師からあの患者さんの診察をしてくださいと依頼されても『なんで私が診なきゃいけないの?』と宣ったり

 

内部では仕事しないし、たいしたこともできないことで有名なのに、外向けでは自分はデキる医者を演出し、あたかも自分は人気者と自慢してたり

 

なんだか勘違い的に自分をかっこよく?綺麗に?見せたがったり

 

 

まぁ、人に迷惑をかけなければいいのですが、見ているこちらがなんだか心に痛みを感じます。実体を知っているだけに。

 

私が本当にすごいなぁって思う医者は全く自己主張しないけど、まわりの尊敬がすごくて、内なるオーラがすごい方。謙虚で自分に厳しい方。表舞台にはあまり出て来ないけど、知る人ぞ知るってタイプの方かなぁ。

 

『自分を平気で盛る』医者をみると軽すぎて飛んで行ってしまいそうです。

 

ちなみにこの本、なかなか面白いです。f:id:bluerevolution3:20170225080600j:image

『リハビリ目的の入院』?

『あとはリハビリ次第です。』と言われて急性期病院から紹介される患者さんは多い、という話を以前書きましたが、治療上で患者さんやその家族とこじれて、めんどくさくなってリハビリテーション病院に紹介されてくる方も決して珍しくはありません。

 

その際によく診療情報提供書には『本人家族が貴院にてリハビリを希望されています。』と書かれているのですが、本人に聞くと、『医者からあの病院へ移ってくれ、と言われた。』と答えます。

 

『リハビリ目的』っていうのはマジックワードで、『リハビリ』と患者さんが聞くと元どおりになると考えます。でも世の中、良くなる方もいれば後遺症を残す方もいらっしゃいます。前医からこじれて医療不信を持って転院してくる患者さんの考え方を変えさせるのは難しいです。

 

急性期の先生にお願いしたいのは、くれぐれもこじれた症例を丸投げして送らないで欲しいのです。

『連携』という言葉にひそむ危うさ

最近では『地域連携』とか『他職種連携』という言葉にがキーワードとなり、あたかもみんなでつながっていないといけないような雰囲気になっています。

 

でも私はこの押し付けがましい『連携』ってあまり好きではありません。なんだかその裏に薄汚れた欲望みたいなものが渦巻いている気がするのです。

 

 

よく言われる『他職種連携』

 

巷ではこの言葉があふれています。連呼して叫び続けている人がいます。協力しないと悪口を言ったり、攻撃してきます。そして自分が偉いような雰囲気を作り出します。

 

ただなんとなくこの言葉を叫ぶ方って胡散臭いんですよ。他の職種の人を巻き込めばセミナーや研修会などの人数が増える、出した本が他職種の方にも買ってもらえて発行部数が伸びる、有名になって講演が増えるなど、、なんか『元締め』とか『教祖』みたいな感じになり、下々の方がお布施を上納してるみたいな感じ。

 

一人では、一箇所では仕事は成り立たないことは百も承知です。ただ本当に優しい気持ちであれば、自然とあの人、あの組織と協力してやって行きたいというgive and takeの関係性はできてくるし、お互いの個のレベルアップにつながり、最終的には『目と目で通じ合う』関係になるのではないかと思います。

 

そのような『目と目で通じ合う』関係を作るためには個々のレベルを上げることが必要です。サッカーでも連携が強いチームは強いと言われますが、まずは個々のレベルが高いことが前提であり、どんなに連携が強くても個々のレベルが低いとまず試合になりません。われわれはまずは自分のレベルを上げる必要があると思います。自分自身に言い聞かせる意味をこめて。

 

 

 

『お任せします』

 

患者さんやその家族に病状の説明し、治療のメリットとデメリットをお話しした後に、患者さんやその家族にどういった選択をしますか?と尋ねると、

 

『よくわからないので、先生にお任せします。』

 

という答えが多いです。

 

『わからないことがあったら何でも言ってください。わかるように何度も話しますから。』

 

と言っても、

 

『何がわからないかわからないから、お任せします。』

 

と返ってきます。

 

 

多くの方は医療は間違いがないと考えていますが、医療ほど不確実なことはありません。かなりの確率で大丈夫だと思っても予想外の結果になることも少なくないのです。

 

実際、私もある薬を使って数万分の1の副作用に患者さんが陥って危険な状態になったこともあるので説明は丁寧にします。

 

 

車や家、貴金属など高い買い物をするときには突発的に買う方は少ないはずです。よく考えて買うはずです。そして購入する際にはお店の人にたくさん質問するはずです。

 

自分や家族の体や心は何よりも『高いモノ』のはず。もっともっと自分の体に興味を持ち、医者に過依存しないようにして欲しいと思います。

 

『医学は難しい』という方も多いかもしれません。だけど一つ一つ噛み砕いていけば決してそんなことはありません。いろんな大切なことを思い起こしてくれると思います。

 

 『お任せします』がなければ、自分の体に興味を持ち、病気も減って、医者も暇になり、国民総医療費も減って素晴らしいと思います。私も医者で収入は減るかもしれませんが、そういった社会になる方がよほど嬉しいです。