医療否定記事に思う
週刊現代や週刊ポストなどはこれでもか!と言うくらい医療否定記事をトップにもってくる。
たぶんこういった類の記事はセンセーショナルであり、こういった記事を扱ったほうが売れ行きもいいんだろうなと思います。
今や出版不況。嘘を書いてでも自分の仕事を守らなきゃいけないですもの。
まぁ、私もたまに買ってしまっているので彼らの策略に乗っているのかもしれませんが、私の場合、実際このような記事がどのように書かれて、医療者以外の方がどのような反応をするか?を推測するために買っている感じです。
決して女優さんのヌード写真をみたいわけではないのでσ(^_^;)
たしかに『未破裂脳動脈瘤』をMRIで早期に見つけられた時には治療の考え方は人それぞれ。早めに手術で動脈瘤の破裂を予防したほうがいい、という方もいれば、やらないほうがいいという人もいる。やったことによって動脈瘤が破裂して後遺症をきたす人もいれば成功して普通の生活している人もいる。
逆に手術をしないことにより動脈瘤が破裂して死んでしまった人もいれば、何もなく一生を支障なく過ごす人もいるかもしれません。
言えることは、
『医療ほど不確実であるものはない』
ということである。
前にも書いたように、どんな治療にもメリットとデメリットがあります。そして思いがけない宝くじで5億円あてるより少ない確率でのトラブルもあります。
それらを全て自分事として患者は考え、自分で考えて選択していかなくてはいけません。
『◯◯してはいけない‼︎』とか
『△△すると死ぬ‼︎』とか
断定で書かれているものほど胡散臭いものはないと知っておいたほうがいいと思います。あまりにそのような情報を盲目的に受けると自分の体の健康や財産を失うことになるかもしれません。
それにしても『あべ静江』さんは綺麗だなぁ。
猫の手(^ω^)
今日、所用で実家に行ってきました(^^)
実家には3歳になる猫のみーちゃんがいて、観察することが習慣になっています。
今日はみーちゃんはよく寝ていました。
みーちゃんの手を見ながらふと昔のことを思い出しました。
医者になって1年目。
昔も今と変わらず鈍臭い医者でした。仕事も不器用でいつも失敗ばかりでした。
手術の時など先輩の先生の助手をするのが研修医の仕事なのですが、私はことさらよく怒られていました。
『ったく、しょうがねーなー。全くおめーは役にたたねぇな。これじゃあ、猫の手の方がましだ!』
とまで言われていました。その言葉が印象的すぎて、猫をみるとふと昔のことを思い出します。
そして今、なんとか立ち回りができるレベルになっているのは怒ってくれた先生方のおかげかな、と思っています。
iPS細胞でノーベル賞を受賞した山中伸弥教授も医者としての最初のキャリアは整形外科医でした。とても不器用で『じゃまなか』と呼ばれていたそうです。その屈辱の中で自分の道を見つけ、今では世界的な権威になっています。
怒るほうは覚えていませんが、怒られる方は強烈に覚えています。それをどう生かすが仕事上とても重要な気がします。
今の研修医、あまりに怒りすぎると親が出てきてクレームをつけにくる人もいるとか。それじゃ、本当に先輩の先生が研修医を育てようとしないですし、その研修医も荒波をくぐれず、将来的に苦労することでしょう。
今も私は猫の手以下かもしれませんが、猫のあしなりに地にあしをつけていきたいと思っています。
ロキソニンいじめ?
最近、医療否定本がたくさん出され、その中に
『ロキソニンは重大な副作用がでるから、絶対飲んではいけない!』
なんて発言がちらほら見られます。
ロキソニンってご存知でしょうか?
超メジャーな消炎鎮痛薬です。今は『ロキソニンS』が第1類医薬品として薬局に普通に売っているので知っている方も多いでしょう。
このロキソニン、特にいたみに対してのキレは良くて比較的に使いやすい薬でかつ、結構痛みが強い患者さんに喜ばれる薬です。
2015年の薬の売り上げで約244億円。全薬の14位くらいだったと思います。ジェネリックがかなりたくさんでているので、消炎鎮痛薬として出されている薬としてはダントツのトップでしょう。
私が医者になる前からある薬なので通算売り上げは兆円レベルかもしれませんね。
最近、このロキソニンのバッシング記事がひどいものです。
『ロキソニンを飲むと腸閉塞(糞詰まり)になって死んじゃう』
とか
『ロキソニンを飲むと腎臓を壊して透析になってしまう』
とか、あたかも飲むと『すごい確率で』後遺症を残すかの表現で報道するからひどいものです。
腸閉塞での死亡例が5例あったとのことですが、明らかなロキソニンとの直接な因果関係はなく、はっきりとしてはいないようです。
ロキソニン服用者は通算4、5千万人と言われ、その中の五人ですから、確率としては1千万人に一人くらい。宝くじで5億円当たるより可能性としては低いくらいなのです。
ロキソニンの副作用として一番多いのは、胃炎や胃潰瘍などの消化器の炎症で、これが大体0.1%くらいです。これも胃薬を同時服用することでその可能性を減らすことができます。一般的に『ムコスタ』という薬と同時に処方するので、
『ロキムコ』
として有名です。
なぜ、ロキソニンがこんなにバッシングされるのか?
ロキソニンに対して『恨み』があるか、『妬み』がある方がいらっしゃり、メディアであおって攻撃しているのかもしれませんね。
どんな薬、いや食べものですら、口に入れるものは大なり小なり何かしらトラブルが起こることがあります。
私が今まで薬の副作用で一番恐ろしい経験をしたのは、14年前にある病院で当直していた時、夕方6時くらいに全身皮膚ずりむけのショック状態になった20代男性が運ばれてきました。付き添ってきた母親に話を聞くと、前日に風邪のため服用した某社の風邪薬を飲んでからおかしくなり、皮膚のただれがひどくなり救急車を呼んだとのこと。
『もしかしてTEN?』
TENとは薬の副作用でもっとも恐ろしいとされる『中毒性皮膚壊死融解症』。
教科書でしかみたことはなかったけど、本当にあるんだと背筋が凍りました。すぐさま3次救急病院に転送しましたが、ほどなく亡くなったと報告を受けました。
どんな軽いと思われる薬でもこのように最悪な場面になることもあります。飛行機事故よりも低い確率で。何が起こるのかわからないのが人間なのです。
ロキソニンいじめ?に見えるものはロキソニンというインパクトがある薬に悪い評判がたてば、それだけみんなにインパクトを与え、ロキソニンの評判を落とすことができます。ですが、ロキソニンのメリットとデメリットを天秤にかけたらどうでしょうか?
私は持病の腰痛があり、急性の痛みの時には『ロキムコ』が一番の味方です。これでなんとか急場をしのいだことも多々あります。
第一三共の回しものではありませんが、痛みがある方にとってはなくてはならないものなのです。
ある有名な薬が攻撃されている時、裏で何が起こっているかをよく調べていただけたら幸いです。
震災に思う
2011年3月11日14時46分
千年に一度と言われるくらいの未曾有の大震災が東北の広いエリアを襲いました。
あるエリアでは津波で多くの命、建物、インフラを失い、あるエリアでは原発事故で人が住めないエリアになってしまいました。
あれから6年。長かったような短かったようなそんな気分。
私が住んでいる群馬県でも相当揺れ、東北とは比べものにはならないくらいですが、それなりに被害がでました。
地震が起こった直後、すぐに停電になり、病院内の電気が自家発電になりました。しかし、エレベーターは止まったままで中に誰かいるかどうかもわからず不安な状態でした。
そしてエレベーターがないため、1階でリハビリテーションをしていた車椅子の患者さんが3階と4階の病室に戻ることができず、人海戦術で一人の車椅子の患者さんあたり四人のスタッフを使って持ち上げながら階段を上って1階から3階と4階の病室に戻しました。
また食事に関してもエレベーターが使えないので2階の厨房から病室までバケツリレーで患者さんの食事を運びました。
震災が起こって数日後、ご存知の通りガソリン不足でかなりのスタッフの通勤が困難になったり、物流が停滞し、食事の材料がなくなり、患者さんの食事も保存食になったり、少なくなったりしました。このように不便な状態であっても患者は文句も言わず、われわれスタッフに対しての感謝の気持ちをいつも表してくれたことにわれわれも嬉しい思いでした。
しばらくたってわれわれの住んでいるエリアは震災の前の状態に戻りました。戻ったら戻ったで、患者さんからは『こんな食事、食えるか!』とか『看護師が来るのが遅い!』とか不満が多く聞かれるようになりました。
人間、便利で安定な場所にいるとちょっとしたことで『不満』な気持ちが強くなるもんだなぁ、とつくづく思います。
震災という極限の生活をしてみて初めて『当たり前と思ったことが非常に大切で幸せなこと』だと知ったはずなのに、また便利な生活に戻るとそれをわすれてしまう。なんて愚かなんだと思います。でもそれが人間なんだろうな、と思います。
人間、便利すぎると本当に大切なものがわからない、多くのものを失って本当に幸せなことがわかる。
震災を通じてそのように感じます。
震災のことを考えると家で飼っているウサギのことを思い出します。たまたま震災の1週間前に長男の8歳の誕生日祝いにウサギを飼いました。このウサギもうちに来て6年。イレウスで死にかかったり、外に脱走したら猫に襲われ、左足を骨折して変形してしまいましたが、今も元気でいてくれています。人間の嫌なことを考えるときに、このウサギを見て気持ちを落ち着かせるとともに癒されています。
介護に関して思うこと
日本の高齢者人口(65歳以上の人口)は平成27年で3384万人、総人口の26.7%を占め、まさに超高齢社会の中にいます。そして80歳以上の人口は1000万人を超え、総人口に占める割合は7.9%だそうです。
10年以内には高齢者人口は総人口の30%を超え、そして80歳以上の人口は総人口の10%以上になることでしょう。
私が子供だった約40年前には80歳以上の方に出会うのは珍しく、『いやぁ、長生きですね。』なんて会話をしていましたが、最近では80歳くらいはむしろ『若い』部類に入ってしまい、90代後半くらいで『いやぁ、長生きですね。』と言っているくらいです。
長生きする人が増えているということは『衰えてきている人』が増えている、『病気にかかって後遺症をもっている人』が増えてきていることを意味します。
今まで自分一人でできていたことができなくなってしまった。生活に関係のないことができなくなるのなら支障はないのですが、トイレや入浴、移動などが一人でできなくなってしまう方は実際かなりの数に登ります。
その時に必要なことは他者の介入、いわゆる『介護』です。
2000年に介護保険制度ができて、日本の介護の世界は一変しました。今までは比較的、自宅で高齢者を介護していたのが、事業者がうようよできてきて、『お年寄り預かり所』みたいな感じになってしまっています。
『介護』というのがまさに『お年寄りをあつめて、そこでお世話をすること』と同義語として扱われ、お年寄りは何かをやってもらうことに慣れてしまい、何か気に入らないことがあると文句を言うような傾向になっています。
介護をする側は、そのような高齢者や家族の文句に耐えながら、『なんでもやって差し上げる』と言う風潮にあり、やがて精神的に疲れてしまい離職につながっていく。
今の日本の現状で多くの介護者が嫌な思いをしながら仕事をしているのが現状なのかもしれません。
そのような風潮に風穴をあけようとしているのが、『kaigoカフェ』を開設している高瀬比左子さん。介護者同士で語り合う場所を作って、お互いの悩みを共有しながら、より『介護業界』を良い方向にもっていきたいと言う強い意志があります。
2回、高瀬さんにお会いしたことがありますが、本当にお綺麗でほんわかした感じなのですが、その後ろにものすごいオーラを感じます。まだまだ高瀬さんの試みに賛同している方は少数ですが、この動きが広まればいいなぁと思っています。
本来あるべき『介護』の姿はまだまだ道なかば。みんなで考えていく必要があります。
祝・ブログ開設1ヶ月
早いものでこのブログを開設して1ヶ月になりました。おかげさまでコンスタントに読んでくれる方がいらっしゃり、それなりにアクセスしていただいていることを感謝しています。
もともと医療ネタは私のfacebookに頻繁に書いていて、それなりのお褒めのお言葉と批判のお言葉をいただいていました。
facebookのセキュリティ上での問題で私のfacebookは『友達限定』でしか読むことはできませんでした。全体公開をしてしまうといろんな悪い方がアドレスを乗っ取ってしまいそうですので。
私の備忘録、そしてこんな考え方もあるんだよと知っていただけたらと思い、ブログを開設しました。
医療や介護というものが行きすぎたビジネス化をしているのを本当に危惧しています。なにやらイベント化して、自分の名を上げて患者さんを増やして収益をあげたり、とてつもなく正義感ぶって周りにはすごく立派な医者を演じているのに、内部ではえげつないノルマを課して現場を疲弊させていたりする医者をたくさんみてきました。
特に私の知り合いの開業医に至ってはホームページに『皆様とともにあゆみ、皆様のライフプランナーになりたい』とか書いていたくせに(今は削除されています)、気に入らない患者は見ない。適当にマッサージにまわす。ポルシェに乗り回し、資産分散させて運用しているなど、『なんだかなぁ』って感じの方がいます。
もともと医療や介護って報酬は保険料だったり、税金だったりしているわけです。適正な報酬を得ることは必要だけど、それ以上に治療の必要のない方を何年も引っ張って治療?し、報酬を得たり、必要もない治療を勧めたり、患者負担が少ないことをいいことに銭を貪り続ける医療者がたくさんいることがなんとも嫌で嫌でたまらないのです。
そのようなとんでもない医療者は情報の薄い患者をいいように治療しているのです。ですから患者のほうも少しでも賢くならなくてはいけません。
『先生に全てお任せします。』
ではダメだと思うんです。
自分の体にもっと興味をもち、重症な病気に少しでもならないような生活習慣をつけることが必要だと思うんです。そのためにあまりお金がかからず、自分の体をコントロールすることをみんなで考える機会ができるブログになればいいなぁと考えています。
私は高卒の零細企業勤務の両親に育てられました。うちはビンボーでしたが、真面目でとても優しい両親に育てられました。一度だけの人生、お金ではなく、どのように他のひとに貢献できるかが人間の価値なんだよ、と教えられました。
私のブログを読んでもお金儲けはできませんが、何かの役に立ってくれればいいなぁと思っています。
今後ともよろしくお願いします。
これは今日のお弁当。
口の中は全身を診る上での本物の『入口』である
私は普段、脳卒中や骨折による後遺症を来した患者さんを診ることが多く、このような方々がこれからどのように暮らし、どのように生きていくかをお互いに考えていく、そのためのお手伝いをする仕事をしています。
脳卒中や骨折の患者さんを診ていて思うこと。それは高血圧症や糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などの基礎疾患、いわゆる生活習慣病と言われるものを持つ方が圧倒的に多いのです。その4つの基礎疾患のうち1つ以上持つ人はおそらく9割はいますし、4つ全部もっているつわもの?も数%はいると思います。
そして患者さんを診る時に初めに診るところは『口の中』です。
結構多くの方がこのような口の中を呈しています。
口の中が汚い、臭い。虫歯だらけ、歯周病がひどく歯茎がどす黒いなどなど。
たいがい重症な脳疾患や内臓疾患を来した患者さんの大多数が口の中、歯などに大きな異常をきたしていることは間違いないと考えていいかもしれません。
虫歯や歯周病があるから、脳疾患や重症な内臓疾患になるのか?
脳疾患や重症な内臓疾患があるから、虫歯や歯周病になるのか?
鶏と卵の関係のようですが、おそらく両方ではないか?と考えています。
まず口の中を気にしない方は基本的に症状が出ない自分の病気を気にするはずがありません。口の中の綺麗さとか匂いとかを気にする方は自分の体に敏感なので、重症化する前にいろいろ手を打つので比較的健康かもしれません。
口の中がめちゃくちゃ綺麗な脳疾患の患者さんはほとんど見ないと言っても過言じゃないかもしれません。
もう一つ、口の中のある部分は体の調子をみるバロメーターになります。
その場所とは『舌』です。
舌が浮腫んでいるか、乾いているか?
舌の上の舌苔(舌の表面の白い部分)がどうなっているか?
舌全体が汚くないか?
口内炎はないか?
舌の裏側の血管が怒張してないか?
それだけでも体の調子や元気さがあらかたわかることがあります。漢方の世界では昔からなされていました。
口の中には全身に関わる大きな情報が隠されています。それを管理するだけで大きな病気は少なからず減ってくるのだろうと思います。
歯医者の肩入れをするわけではないのですが、しっかりとした歯医者に診てもらい口の中をコントロールしてもらう必要があります。
ただ一つだけ注意。歯医者も時々悪徳な人がいていつまでもいつまでも頻繁に通院させる人がいるので気をつけてくださいね。