リハドクターKのたわごと

医学医療への雑感を書き記します

歯のインプラントに関して

歯のインプラントってご存知ですか?

 

なんらかの原因で歯が欠損してしまった場合、チタンやチタン合金などの金属を歯根の代わりに顎の骨に埋め込み、人工の歯をつくるものです。

 

メリットは入れ歯にはない適合性の良さや周りの歯との噛み合わせがよくなるようです。

 

1本あたり30万から40万円かかり、保険適応はありません。

 

要するに『骨の中に金属を埋め込んで歯の代わりにするもの』と考えて良いようです。

 

 話は変わりますが、私はリハ医をする前には整形外科医として、膝関節を専門にしていました。一番多く扱っていたのは変形性膝関節症という軟骨がすり減り、関節の機能を失ってしまう病気です。軟骨は一度すり減ってしまったら生えては来ません。めちゃくちゃ痛いのです。

 

治療方法としてメジャーなのは壊れた関節を金属材料で植え替える『人工関節置換術』というものがあります。膝に金属を入れて膝の代用をするのです。この手術をすると非常に喜ばれます。トラブルがなければかなり痛みが消えますので。

 

私もたくさん人工膝関節置換術をさせていただきました。その際にいつも気にしていたのは、

 

『骨の中に金属を入れ込む時はとにかく細菌感染に注意。徹底した無菌処置、清潔処置をすること』

 

でした。

 

骨の中、とくに関節の中にバイ菌が侵入するとやっかいです。骨の中は血の塊で栄養分がたくさんあり、バイ菌さんの格好の天国のような場所で繁殖していきます。そして骨を徹底的に破壊していきます。金属の周りは白血球などの免疫細胞がとどきにくいので、格好のバイ菌の隠れ家になるのです。

 

とにかく骨の中に金属を入れる時は気をつけろと教えられてきました。骨の中や関節の中は無菌状態です。手術中にバイ菌が侵入してくるので、徹底的に洗い、バイ菌を洗い流し、抗菌剤を使い、バイ菌を殺します。そうすることで骨の中に金属が入っても安定できる環境をつくるのです。

 

人工膝関節置換術も骨の中に金属を入れ、膝の代わりをすると考えられます。

 

 

話を元に戻しましょう。

 

 

歯のインプラントと人工膝関節置換術って似てると思いませんか?

 

でもね。かなりの違和感を感じるんですよ。

 

骨の中に埋め込んだ金属の周りってバイ菌の隠れ家みたいなものって先ほど言いました。

 

人工膝関節の場合、基本的にバイ菌がいないところに金属を入れ込みます。

 

でもインプラントって口の中に入れるんですよね。

 

口の中ってどんな環境だと思いますか?よーく考えてみてください。そのような環境の中に金属を骨の中にいれるんですよ。

 

人工膝関節の場合、無菌状態で行っていても長期的に見ると骨や関節に感染を来して、関節破壊をきたしてしまう可能性は数%あります。無菌状態でもです。

 

インプラントの場合はどうでしょう?

ちなみにしっかりとしたインプラント周囲炎の発生頻度のデータはありませんが、ネットによると数十%の感染率の推測があります。

 

一度骨の中のバイ菌による感染をきたすと本当にやっかいです。治ったと思っても少し抵抗力が落ちるとまた再燃してしまうことがあります。

 

インプラント治療を否定するつもりはありませんが、無菌状態で金属を骨の中に入れてきた人間として違和感が拭えないのです。

 

インプラントをお考えの方はいろんなメリット、デメリットを考えて治療を受けてください。

 

まぁ、何よりも歯をなくさないことが一番です。しっかりとした食生活、しっかりとした生活習慣、定期的な歯のメインテナンスを行うだけで歯も歯茎も健全になり、歯も歯茎も健康なら全身も元気になりますよ。

 

 

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