ロキソニンいじめ?
最近、医療否定本がたくさん出され、その中に
『ロキソニンは重大な副作用がでるから、絶対飲んではいけない!』
なんて発言がちらほら見られます。
ロキソニンってご存知でしょうか?
超メジャーな消炎鎮痛薬です。今は『ロキソニンS』が第1類医薬品として薬局に普通に売っているので知っている方も多いでしょう。
このロキソニン、特にいたみに対してのキレは良くて比較的に使いやすい薬でかつ、結構痛みが強い患者さんに喜ばれる薬です。
2015年の薬の売り上げで約244億円。全薬の14位くらいだったと思います。ジェネリックがかなりたくさんでているので、消炎鎮痛薬として出されている薬としてはダントツのトップでしょう。
私が医者になる前からある薬なので通算売り上げは兆円レベルかもしれませんね。
最近、このロキソニンのバッシング記事がひどいものです。
『ロキソニンを飲むと腸閉塞(糞詰まり)になって死んじゃう』
とか
『ロキソニンを飲むと腎臓を壊して透析になってしまう』
とか、あたかも飲むと『すごい確率で』後遺症を残すかの表現で報道するからひどいものです。
腸閉塞での死亡例が5例あったとのことですが、明らかなロキソニンとの直接な因果関係はなく、はっきりとしてはいないようです。
ロキソニン服用者は通算4、5千万人と言われ、その中の五人ですから、確率としては1千万人に一人くらい。宝くじで5億円当たるより可能性としては低いくらいなのです。
ロキソニンの副作用として一番多いのは、胃炎や胃潰瘍などの消化器の炎症で、これが大体0.1%くらいです。これも胃薬を同時服用することでその可能性を減らすことができます。一般的に『ムコスタ』という薬と同時に処方するので、
『ロキムコ』
として有名です。
なぜ、ロキソニンがこんなにバッシングされるのか?
ロキソニンに対して『恨み』があるか、『妬み』がある方がいらっしゃり、メディアであおって攻撃しているのかもしれませんね。
どんな薬、いや食べものですら、口に入れるものは大なり小なり何かしらトラブルが起こることがあります。
私が今まで薬の副作用で一番恐ろしい経験をしたのは、14年前にある病院で当直していた時、夕方6時くらいに全身皮膚ずりむけのショック状態になった20代男性が運ばれてきました。付き添ってきた母親に話を聞くと、前日に風邪のため服用した某社の風邪薬を飲んでからおかしくなり、皮膚のただれがひどくなり救急車を呼んだとのこと。
『もしかしてTEN?』
TENとは薬の副作用でもっとも恐ろしいとされる『中毒性皮膚壊死融解症』。
教科書でしかみたことはなかったけど、本当にあるんだと背筋が凍りました。すぐさま3次救急病院に転送しましたが、ほどなく亡くなったと報告を受けました。
どんな軽いと思われる薬でもこのように最悪な場面になることもあります。飛行機事故よりも低い確率で。何が起こるのかわからないのが人間なのです。
ロキソニンいじめ?に見えるものはロキソニンというインパクトがある薬に悪い評判がたてば、それだけみんなにインパクトを与え、ロキソニンの評判を落とすことができます。ですが、ロキソニンのメリットとデメリットを天秤にかけたらどうでしょうか?
私は持病の腰痛があり、急性の痛みの時には『ロキムコ』が一番の味方です。これでなんとか急場をしのいだことも多々あります。
第一三共の回しものではありませんが、痛みがある方にとってはなくてはならないものなのです。
ある有名な薬が攻撃されている時、裏で何が起こっているかをよく調べていただけたら幸いです。