息子の病気
医者というのは因果な商売だと思う。
身内が病気になるとほとんどの場合、大丈夫だと思われる病気であっても、『最悪な場面』を考えてしまうものだ。
うちの息子、ゴールデンウィーク明けにある軽い病気で手術予定でした。その簡単な手術であってもいろいろ考えてしまうのです。
全身麻酔でこのまま目を覚まさなかったらどうしよう
手術後に声帯麻痺になって呼吸困難になって低酸素脳症になって一生寝たきりになったらどうしよう
術後の抗菌剤点滴でショック状態になったらどうしよう
とかね。ほとんど起こらないであろうトラブルも自分の息子の場合は100倍くらいの可能性で起きるかのごとく、妄想してしまいます。
そんなことを考えていたら、別の病気にかかってしまい、急ぐ手術ではないので今回の手術は延期になりました。
手術が延期になり、その不安は先送りされたのですが、今回の別の病気に関して、また不安な気持ちになってしまうのです。
1万分の1の可能性で肝機能がすごくわるくなって肝性脳症になったらどうしよう
数万分の1の可能性で輸血が必要になったらどうしよう
数十万分の1の可能性で死んだらどうしよう
下手に知識があると不安ばかり、最悪なことばかり考えるからロクなことはないですね。
じゃあ、楽観していていいのか?と思うと医者ってそれではいけないと思うんですよ。いつも言っているけど、人間の体ほど予想がつかないものはないし、医療ほど不確実なものはないのです。
あらゆるリスク、あらゆる最悪な場面を考えて治療に臨むこと。これが医者の使命だと思うんです。
今までの医者人生のなかで予想外の出来事で不幸な転帰を辿った方を何人か見てきました。その方々に報いるため、そして一人でも予想外の事態から患者を救うことがわれわれ医者の使命かなと思います。
息子の病気を通して、医者としての原点を考えさせられます。
でもでも、子供が病気になることは自分がなるよりつらいものです。
久しぶりに食べたサーティワンのバニラ。
おいしい。