現実と矛盾のあいだで
江戸時代に農政学者・思想家として活躍された二宮尊徳という方がいました。
二宮尊徳と言えば、学校の片隅に薪割りを背負って本を読んでいる少年の銅像で有名な方です。幼名・二宮金次郎さんです。
二宮尊徳は生前、このような言葉を残しました。
『道徳を忘れた経済は罪悪である。
経済をわすれた道徳は寝言である。』
この言葉を見聞きするたびに、今の医療介護関係で働く身として大きな矛盾を感じます。
病院は『患者さんの生活や健康を守ります。』と声高々に『道徳』を主張するものの、多くの病院ではその裏で『もっともっと診療報酬(医療収益)をゲットしろ。』と職員に圧力をかけます。まぁ、たしかに収益を得なければ、我々も生活がなりたたないので、収益をあげるように仕事をしているわけです。
ただ、私が医者になった20数年前に比べると、『経済』にかかる比重が高くなり、年々と『もっともっと稼げ。』という圧力は強くなっているなぁと感じます。そして、その『経済主義』を一般の方に見破られないために『イメージ戦略』で売ってくるところも少なくない状態です。
『うちは稼ぎなんてきにしてませんよぉ』
『うちはめちゃくちゃ優しくて居心地がいいところですよぉ。』
『うちは患者さんの生活第一ですよぉ。』
とかやたら強調するところは本当に怪しくて、裏ではけっこう札束を計算してばかりいるところもあります。
私の知り合いの医者で勤務医時代には患者さんに超冷たくて、看護師にはきつくあたっていた奴がいたのですが、開業した途端に、
『私は地域皆様のライフサポーターになりたい。』
と宣い、一度来院した患者をあの手この手で何度も再診させ、稼いだお金で外貨投資しているとかいう話を聞きました。
医療や介護の仕事、、、
たしかに稼がなければなりたたないのは百も承知ですが、『経済』と『道徳』のバランスで『経済』がどんどん比重を増してきていて、なんとなくつまんないなぁと感じる今日この頃。
今日もまた矛盾を抱えながら、現実の世界を生きています。
私も幼少のころの二宮金次郎さんみたいに純粋な気持ちで仕事をしてみたいなぁと思っています。