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リハドクターKのたわごと

医学医療への雑感を書き記します

たかが転倒、されど転倒。転倒はおそろしい。

年齢を重ねると人は転びやすくなります。

 

以前からいわれていることですが、転倒して骨折したり、頭を強く打って重症になる高齢者は増えています。

 

今回は骨折に関して、少しお話ししたいと思います。

 

高齢者が転倒して骨折しやすい部位ってどこだかわかりますか?

 

それでは主に4つ挙げてみます。

 

①股のつけ根の骨折で、『大腿骨近位部骨折』

 

 

②背骨の骨の骨折で、『脊椎圧迫骨折』

 

③肘から手首にかけて2本の長い骨があって、親指側の骨を橈骨といい、小指側の骨を尺骨といいますが、橈骨側の骨折が多く、これが『橈骨遠位端骨折』

 

④肩のつけ根の骨折で、『上腕骨近位部骨折』

 

その他にもいろんな骨折を起こしてくる方はいらっしゃいますが、この4つだけでほぼ90%くらい占めるかもしれません。

 

 

特に多いのは①の大腿骨近位部骨折でなかなかやっかいな骨折です。

 

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このレントゲン写真で右と左側の太もものつけ根の部分を比べてみてください。

 

日本人の寝たきりになる理由の第1位は脳卒中などによるものですが、第2位はこの骨折によるものです。

 

私が医者になった20数年前の日本におけるこの骨折の発生数は年間約10万人くらいでした。私もたくさんの手術をさせてもらいました。

 

現在はその数は20万人近くになっています。そして2030年には30万人に達するといわれています。

 

私が医者になりたてのころは認知症の人と認知症でない人のこの骨折を起こす割合は半々くらいで、平均年齢は70台後半でしたが、今はおそらく8割方が認知症で平均年齢は80台半ばくらいと思います。

 

みなさんは『たかが骨折だろ。すぐ治るだろ。』と思われるかもしれませんが、この骨折を起こすと、どんなに認知症がなくても元気であっても運動能力は1ランク以上は落ちます。

 

ましてや認知症の患者さんは再転倒を起こしやすく、臥床期間が長くなりやすいため、寝たきりになりやすくなります。寝たきりになると、肺炎になりやすくなり、食べられなくなったり、栄養状態が悪くなり、下手したら全身状態悪化で亡くなるケースもまれではありません。

 

『たかが骨折だろ。』と思われている骨折ですが、実は『死と隣り合わせの骨折』であるのです。この骨折を起こした後の5年生存率は50%以下というデータもあるようです。

 

認知症や全身状態の悪化で足腰がおぼつかなくなった時に起こしやすいこの骨折。今後さらに増えてくるので、これらの方のケアはどうあるべきか、国民全体で考えていかなくてはいけないかもしれません。