体のメインテナンスはやはり必要だと思います^ ^
4月の初旬、勤務先で定期検診が義務付けられているため、本日ドッグに行ってきました。
いろんなコースがありますが、私は半日のコース。血液検査、レントゲン検査、エコー検査、視力や聴力検査、呼吸機能検査、そして胃の内視鏡検査などを行います。
1年1回毎年やっていると、いろいろな体の変化がわかります。
体重が増えたなぁ、、、
視力が落ちたなぁ、、、
総コレステロール値が上がったなぁ、、、
とか。
場合によってはエコーなどでなんだか病変が見つかったりしたりして、外科の先生から手術の適応などを聞けたりします。
人間は不死身ではありません。年を取ればガタがきます。これはある意味で電化製品や車と一緒。特に車などに関しては事前に異常を発見しておかなくては重大な事故になりかねないので、定期メインテナンスに出したり車検があったりするわけです。
人間だってずっとほおっておいたら、いつの間にか大きな病気に侵されて、再起不能な状態に陥るかもしれません。だからやはり1年に1回は自分の体を見直すことは必要だと思います。
自分の体を客観的にみることにより、1年をどう過ごそうかを確認するという意味でも定期検診は重要です。
視力が落ちた。もしかしたらパソコンやスマホの見過ぎかも?
γ-GTPがあがってる。もしかしたら酒飲みすぎかも?
中性脂肪やHbA1cがあがってる。もしかしたら甘いものの食べ過ぎかも。
とか少し反省しながら生活を変えていくことにより健康や若さを保てるような気がします。
前にも何度も書いていますが、大きな病気になってしまうと思っている以上に治らないことが多いのです。それならば少しでも重症化しないように気をつけた方が安上がりだと思うのです。
人間ドッグは医療機関が病気を見つけ、そしてそれを治療するための金儲けのツールだと言う方もいます。人間ドッグをやったからと言って大きな病気にならないと言う保証はありません。だけど『その可能性を低くする』ものだと考えればいいのではないか?と思うのです。
さてさて今回も胃の内視鏡をしました。私は鼻の通りが悪いので、口からの内視鏡なのですが、相変わらず苦しかったです。だけどこの検査の患者さんの苦しみは誰よりもわかります。そしてその苦しさを和らげるために内視鏡な看護師さんが検査中に背中をさすってくれるあの優しさはなんとも言えないものがあります。
ぐるぐる ぐるぐる グルコサミンは効果的なのか?
BSテレビをかけていると健康食品などの通信販売のCMをたくさんやってますね。
職業がらよくこんなことを聞かれます。
『グルコサミンとかコンドロイチンとかヒアルロン酸のサプリメントって効果的なんですか?』
そんな時はこう答えるようにしています。
『販売会社や舞の海さんの経済活動にとっては効果的かもしれませんね。』
関節の軟骨がすり減ったことによって関節痛(関節症といいます)がおきます。関節軟骨の成分として、コンドロイチンやグルコサミン、コラーゲンやヒアルロン酸があります。業者の言い分ではそのすり減った軟骨の成分を補うためにこれらのコンドロイチンやグルコサミンを飲めば関節痛は良くなるよ、といいたいわけです。
じゃあ、サプリメントとしてこれらを飲めば関節の軟骨が増えるの?
結論から言えばこれらのサプリメントを飲んでも、サプリメント中のコンドロイチンやヒアルロン酸が軟骨の中に入り込むことはなく、肝臓で代謝されてしまうのがオチなのです。
これだけテレビで派手に宣伝していれば、テレビしか見ない情報弱者は簡単に騙されてしまいます。そして何万円にも及ぶ無駄金を使ってしまうことになります。騙されたくなければ、やはりいろいろ調べてみることが重要です。
医者の見地からすれば、そんなに効果的ならなんで『クスリ』として発売されないんだろう?なんです。
たかが転倒、されど転倒。転倒はおそろしい。
年齢を重ねると人は転びやすくなります。
以前からいわれていることですが、転倒して骨折したり、頭を強く打って重症になる高齢者は増えています。
今回は骨折に関して、少しお話ししたいと思います。
高齢者が転倒して骨折しやすい部位ってどこだかわかりますか?
それでは主に4つ挙げてみます。
①股のつけ根の骨折で、『大腿骨近位部骨折』
②背骨の骨の骨折で、『脊椎圧迫骨折』
③肘から手首にかけて2本の長い骨があって、親指側の骨を橈骨といい、小指側の骨を尺骨といいますが、橈骨側の骨折が多く、これが『橈骨遠位端骨折』
④肩のつけ根の骨折で、『上腕骨近位部骨折』
その他にもいろんな骨折を起こしてくる方はいらっしゃいますが、この4つだけでほぼ90%くらい占めるかもしれません。
特に多いのは①の大腿骨近位部骨折でなかなかやっかいな骨折です。
このレントゲン写真で右と左側の太もものつけ根の部分を比べてみてください。
日本人の寝たきりになる理由の第1位は脳卒中などによるものですが、第2位はこの骨折によるものです。
私が医者になった20数年前の日本におけるこの骨折の発生数は年間約10万人くらいでした。私もたくさんの手術をさせてもらいました。
現在はその数は20万人近くになっています。そして2030年には30万人に達するといわれています。
私が医者になりたてのころは認知症の人と認知症でない人のこの骨折を起こす割合は半々くらいで、平均年齢は70台後半でしたが、今はおそらく8割方が認知症で平均年齢は80台半ばくらいと思います。
みなさんは『たかが骨折だろ。すぐ治るだろ。』と思われるかもしれませんが、この骨折を起こすと、どんなに認知症がなくても元気であっても運動能力は1ランク以上は落ちます。
ましてや認知症の患者さんは再転倒を起こしやすく、臥床期間が長くなりやすいため、寝たきりになりやすくなります。寝たきりになると、肺炎になりやすくなり、食べられなくなったり、栄養状態が悪くなり、下手したら全身状態悪化で亡くなるケースもまれではありません。
『たかが骨折だろ。』と思われている骨折ですが、実は『死と隣り合わせの骨折』であるのです。この骨折を起こした後の5年生存率は50%以下というデータもあるようです。
認知症や全身状態の悪化で足腰がおぼつかなくなった時に起こしやすいこの骨折。今後さらに増えてくるので、これらの方のケアはどうあるべきか、国民全体で考えていかなくてはいけないかもしれません。
食べること、食べられることは素晴らしい②
昨日は『摂食嚥下障害』の大まかなことに関して書かせていただきました。
今回は『どのような基準で口から食べていただくか』に関して書こうかなと思います。
摂食嚥下障害に関しては3つのパターンがあるとお話ししました。
①意識状態が悪くて、なかなか反応しないパターン
②意識状態は良く、本人は食べたい意欲はあるけど、器質的機能的に食べられないパターン
③認知症などの原因で食べることを拒否してしまうパターン
①に関しては意識状態が良くなることをひたすら神に祈ります。意識状態が良くならない限り、口から食べ物を食べるのは危険だからです。ただ①のパターンは意識状態が良くなるにつれて食べられるケースが比較的多かったりします。
③に関しては器質的機能的には異常はないのですが、本人が食に関心が向くように環境を変えてみます。一人にした方がいいのか?色合いがいい方がいいのか?嗜好はどうなのか?
いろんな環境調整で食べてくれる方もいるし、食べてくれない人もいます。やはりこのパターンが一番難しいです。
リハビリテーション科が一番関わるのは②のパターンです。どこに原因があるのか?をまず探ります。
食べ物をちゃんと認識しているか?
食べ物の食べ方をちゃんと認識しているか?
舌はちゃんと動いているか?
ちゃんと『ごっくん』できているか?
食べた時にむせてないか?
食べたあとにガラガラ声になっていないか?
などなど。
視診や触診、喉の聴診などを行なった後に症例によっては精密な検査をします。摂食嚥下障害の検査のゴールデンスタンダードな検査として、
①嚥下内視鏡検査
②嚥下造影検査
があります。
①の嚥下内視鏡検査についてお話しします。
細い内視鏡を鼻から挿入して、声帯の手前まで入れて、声帯周囲を観察します。
実際に何かものを食べてもらって、声帯を超えて食べ物が進入してないか、声帯周囲に食べ物の残りカスが多量に残ってないか、などをみます。声帯の奥は気管支や肺になるので、声帯を食べ物が超えてしまうと肺炎の大きな原因になります。また声帯周囲に食べ物がたくさん残っていると知らないうちにその食べ物が声帯を超えて肺に入ってしまい、誤嚥性肺炎の原因になります。
②の嚥下造影検査に関してお話しします。
嚥下造影検査とは食べ物に造影剤という薬を混ぜて、レントゲンの透視を使いその食べ物を食べていただき、ちゃんと口から食道まで食べ物が通るか調べる検査です。
この検査を通じてどこの動きが悪くて、食べ物がちゃんと胃に入っていかないのか?どうして肺に入ってしまうのか?どのような食形態であれば安全に食べられそうかなど多くの情報をえられます。
最近ではこれらの検査をして、誤嚥があるから口から食べるのはダメといわれて食べることを禁じられるパターンも増えています。でもこれらの検査はあくまでも検査であって、『たべられるか、食べられないか』だけを判断するものだけでなく、『この検査を通じてどうすれば食べられそうか』を本気で考えられるレベルまで上げていかなくてはいけません。
最近、私自身あまりこれらの検査をしなくなりました。最盛期に比べたら5分の1くらいになりました。やりたくないと言う理由でなくて、多くの場合、姿勢や食べさせ方で結構食べられる方のパターンがわかってきたからかもしれません。本当に必要な時にだけ検査することにしています。やはり検査は検査。昨日も言ったようにしっかりその『患者を診る』と言うことが必要なのかもしれません。
食べること、食べられることは素晴らしい①
病気やケガなどを機に食事がとれなくなる方がいらっしゃいます。
そのような状態を『摂食嚥下障害』と言います。
この摂食嚥下障害は大きく分けて3つのパターンに分かれます。
① 意識状態が非常に悪くて、呼んでも刺激を与えても反応がないパターンで口も開けられない状態
②意識状態もいいし、反応も良好ですが、神経がうまく働かなかったり、飲み込みするための咽頭や舌、喉頭などの器質的、機能的障害で食べたくても食べられない状態
③認知症や精神障害などで器質的、機能的には問題ないものの食べることを拒否している状態
①に関してはとにかく意識状態が戻らないことには食べ物を口に入れたとしても噛まないし、飲み込めないので、下手したら窒息して死にます。だから口からの食事は困難なため、点滴や鼻や胃からのチューブで栄養をいれます。栄養を入れないと餓死しますので。
意識状態が良くなったら、その反応を見ながら口から食事をとる練習はします。それが十分に生きるに足りるくらいの栄養量をとれるかどうかを判断した上で、チューブからの栄養や点滴からの離脱を考えます。このへんの判断は医者の冷静な目が必要でしょう。
②に関しては、いわゆる『リハビリテーションに詳しい医者』の最も活躍が期待される場面です。食べたいけど食べられない方をなんとかして食べさせるためにはどのようなプラン立てをしていったらいいか、知識と情熱以外ないかもしれませんね。
長い時間、何度も何度も訓練して、食べられるようになった時の感動は患者はおろかスタッフも涙が出るほど嬉しいのです。『摂食嚥下障害』を知らない医者はひたすら絶食にし、スタッフに丸投げなのですが、②のような方にはあらゆる選択肢を駆使してリハビリテーションを継続すべきなのです。
③に関しては一番厄介です。本人が食べようとしないので。いろんな食事形態や声かけを変えてみたりして、なんとか食事をとってくれる方はいますが、頑としてとらなかったり、吐き出してしまったり、そのうちやせ細ってしまって状態が悪くなる方も少なくありません。おそらくこれからこのような方は増えてくるでしょう。
『摂食嚥下障害』のリハビリテーションで必要なことは確実な知識と冷静な判断、そして情熱だと思います。ただ最近、感情論だけで突き動かされて、『口から食べさせなくては悪だ。』みたいな考えの方も増えていて厄介です。
食べさせたいという気持ちはわかりますが、冷静に判断しなくてはいけません。無理に食べさせれば窒息するし、喉に残留が多くて、夜間に残留物が肺に入って誤嚥性肺炎ってことも多いですので。
このような冷静な目を持つ医者が増えてくることを祈っています。
数週間前、某所で食べたピザ。
とても美味しかったです。やはり美味しいものを食べられるのは幸せですね。
wrist cutter
今日、あるお気に入りのピアニストがfacebookで自分のリストカットをアップしました。
美人でセクシーで
学歴は抜群で
ピアノの腕前はすごくて
家はお金持ち
これ以上何を求めるの?って感じの方なんですが、やはり心の闇はあり、誰かに構って欲しかったのかもしれません。そしてこの心の寂しさをわかってもらいたかったのかもしれません。
どんなに環境が恵まれていても幸せとは限らないし、いろんな苦悩が付きまとうかもしれません。
一方どんなに環境が良くなくても、心が平穏で幸せな方がいます。
『幸せは自分の心が決める。』
とは良く言ったものです。
少しリストカットに関して書きます。自殺目的でリストカットする方が多いですが、リストカットで亡くなる方は少ないです。動脈としてはやや細めで、切ったあとにうつ伏せになると圧迫されて止血することが多いのです。
一般的に派手な行為なので、みんなから注目されます。何度もリストカットする方はいわゆる『かまってちゃん』が多いです。ただ誰にもわからない心の闇を表現しているのです。褒められた行為ではないけど、そうでしか表現できない辛さをわかってあげる必要はあるかもしれませんね。
救急外来でリストカットの患者を今まで何度か見てきましたが、『心の叫び』と考えると、多少の同情の余地はありそうです。